EnOceanセミナー#1:バッテリーレス無線センサー技術でわくわくドキドキ!Q&A

6月10日の ALGYAN オンラインセッション「EnOceanセミナー#1:バッテリーレス無線センサー技術でわくわくドキドキ!Q&A」で頂いた Q&A をまとめました。

Q. PTM430J/ECO200関連回路の公開
A.
PTM430J/ECO200関連回路は公開されていません。
しかし確約出来ませんが、EnOcean GmbHは過去の事例では、EnOceanモジュールを使用するシステム開発にとても協力的なため、用途や目的が明確な開発案件であれば、全面的な協力が得られるはずです。詳細は日高か、板垣様に連絡をしてください。

Q. USB400Jのリピータ設定と電源断
A.
TCMに対するテレグラムフィルターやリピータ設定は、TCM(この場合はUSB400J)が電源断となると消えます。しかし最近のPC等で良くある様に、Host CPUの電源が落ちていてUSBに電源供給が続く状態では、TCMでは最後の設定が残ったままになります。この様な状況なので、一般にTCMを制御するHost側のゲートウェイプログラムは、どの状況でも正しく動作させるために、起動時には必ず接続しているTCMを初期化後、Host側で記憶している必要なテレグラムフィルターやリピータ設定をロードしてから動作する様にします。

Q. TCM410J用ブレイクアウトボード
A.
世界レベルでは、サードパーティーから販売されていた事例もありすますが、安定入手可能なSTM/TCM用ブレイクアウトボードとしては、評価キットEDK400Jに含まれる
EOP350とSTM400Jの組み合わせをお勧めします。一式4万円程度で入手可能なため、自前でボードを作成したり、ユニバーサル基板で手作業でハンダ付け配線したりするよりは、効率が良いと思います。

Q. マルチセンサーへの外部電源給電
A.
新製品のSTM550Jは、部品モジュールとしての販売では無く、センサー製品としての販売です。新機構の統合型太陽電池(Itegrated Solar Cell)を搭載していて、効率良く電源管理、外部から動作設定を変更可能です。現時点では、そのままこの統合型太陽電池を使うか、オプションの CR1632コイン電池を付加して使う以外の方法は公開されてていませんし、お勧めしません。おそらく後でSTM500J等のチップモジュールが販売されるはずですから、それらを使用すれば自由な外部電源を利用出来るはずです。

Q. USB400Jで何台のEnOceanデバイスを認識でき通信出来るか
A.
EnOcean通信方式では、Hostシステムの作り方次第で、論理的には無限台数のデバイスを認識し、通信可能です。ただしTCM側の設定テレグラムフィルターのテーブル数ということであれば、確か100個程度の制限があったと思います。しかしこのテレグラムフィルター数の制限は、EnOcean GmbHに依頼することで、個別ファームウェア対応により200でも1000でも拡張可能です。ですがもし仮に、1台のUSB400Jで1000台のデバイスと通信するシステムが必要だすれば、そのシステムは設計や構成を、見直した方が良いです。

Q. EnOcean製品の適用事例をまとめて多く知りたい場合
A.
資料にも記載の通り、EnOcean GmbHとEnOcean Allianceのページは常に最新に更新され、信頼できる情報を発信しています。全体ではかなりの分量ですが、検索機能もあり、比較的平易な英語で記載されているので、一度全体を見ることをお勧めします。

Q. EnOceanセンサーが工場内で、5mくらいの範囲でも届かない
A.
その様な事例は聞いたことがありません。次の可能性があります。
1.センサー台数が多いのにも関わらず、テレグラムフィルターを使用していない。
2.各デバイスの周波数がずれている場合があります。通常は製品製造時やシステム設置時に確認すべきですが、キャリブレーションの実行で容易に修復可能です。
3.海外向け等、日本向け928.35MHzの4xxJシリーズを使用していない。

Q. STM431Jの標準ファームウェアとソースコード
A.
STM431Jは小型軽量の統合型通信モジュールで、改造することで様々な用途に利用可能です。
標準ファームウェアでは次のEEPをサポートしていていずれかを設定して活用可能です。
A5-02-05 0-40℃内蔵温度センサー (標準)
A5-10-03 0-40℃内蔵温度センサー、ポテンショメータ(8bit AD)
A5-10-05 0-40℃内蔵温度センサー、ポテンショメータ(8bit AD)、存在検知(1bit GPIO)
A5-04-01 0-40℃内蔵温度センサー、0-100%湿度センサー(要 HSM100)
A5-10-10 0-40℃内蔵温度センサー、0-100%湿度センサー(要 HSM100)、ポテンショメータ(8bit AD)、存在検知(1bit GPIO)
A5-10-12 0-40℃内蔵温度センサー、0-100%湿度センサー(要 HSM100)、ポテンショメータ(8bit AD)

これらEEPに当てはまらないセンサーを製造する場合は、カスタムファームウェアを開発して対応します。STM431J標準ファームウェアのソースコードは、以前は公開されていましたが、現在は公開されなくなりました。EnOcean GmbHは過去の事例では、EnOceanモジュールを使用する応用システム開発には協力的なため、依頼すればアドバイスが貰えるはずです。

参考情報)
* Dolphin Coreは、I2Cインターフェースを持たないため、0-100%湿度センサーはソフトウェアI2Cで接続しています。
手法は、Application Notes
https://www.enocean.com/en/support/application-notes/
のAN508 として公開しています。
http://www.enocean.com/fileadmin/redaktion/pdf/app_notes/AN508_I2C_DOLPH...

* 弊社で以前、STM431Jベースでマルチタッチボタンを開発した時、カスタムファームウェア開発も検討しましたが、
より簡単に実現できる、アナログ回路で異なる抵抗値を発生するボタン回路を構成して、前述の標準ファームウェアEEP A5-10-03のポテンショ入力として実装しました。

Q. EnOcean Dolphin チップを使用したゲートウェイ開発
A.
日本向けのJシリーズのEnOcean Dolphin チップは、全て電波法の工事設計認証取得済ですので、同じく工事設計認証取得済のアンテナと組み合わせすることで、合法的に電波送信デバイスとして動作させる事ができます。つまりセンサー側のデバイスは認証済アンテナと組み合わせる条件で、自由にデバイス開発ができます。日本では受信側に関しては電波法の一切の制約が無いため、SmartACK送信などに対応しない一般的な、EnOcean電波受信用ゲートウェイはどの様なチップ、デバイスやアンテナを使用しても問題がありません。勿論 EnOcean Dolphin チップを使用すること可能ですし、EnOcean 電波を送信しない限りは、大型で利得が大きいアンテナを接続することも可能です。

Q. 日本ではなぜデファクトスタンダードの地位を得られないのでしょうか?
A.
主力用途のビル管理関連において、日本におけるビジネス形態が、平等な競争があって最適化を望まれる世界基準とは異なるということが一番の理由です。電線関連で恒常的に利益を上げる系列会社を抱える業界が、電線が大量に不要になるシステムを積極的に導入する様になるには、まだ時間がかかりそうです。